IKURA FAN MOTOR
140/142

技術資料142技術資料■ ファンモーターの寿命    ファンの寿命を大別すると、電気的な部分の寿命と機械的部分の寿命があります。ファンモーター構造は、巻線部、回転部及び軸受部フレームから構成され、設計不良の発生しにくいシンプルな構造です。電気的な部分は使用範囲内でご使用される場合、まず問題が発生する事はなく、ほとんどの場合は機械的部分の軸受寿命が起因する要素となります。軸受寿命はファンモーターの設置・運転される環境に大きく左右され重要なファクターの一つですが、運転される前の取り扱いや保管状態も寿命を期待する上では重要なファクターになります。1. 軸受構造 長年のファンモーター設計・製造・販売の経験を生かし、軸受荷重の重量配分、予圧(スラスト荷重)方法、はめあい公差、動バランスなど様々なノウハウをもとに設計しております。回転部分であるローターの重量から適切なシャフト径を選定し、余裕ある軸受サイズのベアリングを使用するとともに、主たる熱源である巻線部分の放熱性を考慮した設計をすることにより、長寿命化を目指しています。弊社の軸流ファンは全て精密ボールベアリングを2個、クロスフロータイプは羽根が長いため3個使用しています。2. 軸受と封入グリース 軸受はある時間を経過すると、音響・振動の増加、内部磨耗による精度低下、封入グリースの劣化、ボール転がり面の疲労はくりなどによって、使用に耐えられなくなります。この使用に耐えられなくなる時間が軸受寿命であり、音響寿命・磨耗寿命・グリース寿命・転がり疲れ寿命などと呼ばれています。ファンモーター運転までの間に取扱上の問題(落下・衝撃)があった場合は転がり面の傷・圧痕・打痕が発生し音響の増大、磨耗寿命・転がり疲れ寿命の低下を招きます。通常はファンモーター運転による巻線からの熱と軸受の自己発熱によりグリースが劣化していき枯渇して寿命に至ります。場合によってはグリースが枯渇しても回転する場合もありますが、過負荷による巻線の異常発熱から巻線のレアーショートを誘発して焼損に至る事もありますので、回転数の低下、又は軸受音響から、ファンモーターの設置された装置の部品として交換時期の設定を行っていただき、安全にファンモーターをご使用下さい。3. 使用温度と湿度 ファンモーターの設置される環境温度・湿度が高い場合、封入グリースの劣化を促進し早期寿命に至ります。湿度に関しては封入グリースの油分離や流出を招きますので、結露する場合は注意が必要です。また保管期間が長かったり、保管する場所の湿度が高い場合も同様な影響を受け、ファンモーター運転の寿命を短くします。昨今はお客様装置の小型化、高速化が進み、高温環境で使用されるケースが多くなってきました。高温環境(100℃以下)で使用される場合、使用する部品も耐熱タイプを選定し、巻線自己発熱の低いコンデンサー型を採用した8507/4507シリーズをご選定下さい。4. 電食 ファンモーターが設置される電源などは高効率、高性能なインバータなどの高周波装置も多く、ファンモーター電源ラインからくる直接的なものや空中を伝播される高周波ノイズにより、軸受のボール転がり面に電流が流れる事により、波状の磨耗痕が発生する場合があります。このような症状は電気車両に設置した場合も発生する事があり、早くて3ヶ月、遅くても1.5年の間に発生する事が多く、症状としては音響寿命(高音の異音)になります。そのまま気付かず運転した場合は、軸受の異常な自己発熱によりグリース寿命に至ります。対策としては筐体とファンモーターを電気的に絶縁(周波数が高い場合効果が低い)するか軸受内部のボール材質をセラミックにしたタイプをご推奨致します。稀なケースであるため標準品としてラインナップしておりませんので、弊社各営業所へご相談下さい。 ■寿命時間-周囲温度曲線

元のページ  ../index.html#140

このブックを見る